BLOG

2015/3/29

いい人と思われたいを捨てる

どうして人間はこれほどまでに重い鎧を着て生きなければならないのでしょうか?私は人に馬鹿にされないために理論武装をする生活にうんざりして会社を辞め、自由に生きようとして新天地を求めたのですが、そこでも他人の目で自分を見てしまい、人からよく思われたい、すごい人だと思われたい、そんな思いから離れることができず、いつの間にかうつ病になってしまったのでした。自分では「どう思われても構わない、自由に生きよう」と思っていても、「人から見てどう見えるか」ということを無意識に考えるクセが出来上がってしまっていたのです。馬鹿にされることを恐れて少しでも利口に見せたい。それが不幸の始まりでした。鎧を下ろせば楽になるのに鎧を着ていることにさえ気づかない。そんな人が私以外にもいると思います。

かつて江戸時代に良寛さんというお坊さんがいました。良寛さんは今でもたいへん人気のあるお坊さんです。なぜ、良寛さんの生き方が今なお尊ばれるのか、それは現代人がすっかり忘れてしまった純朴そのものの生き方だからではないでしょうか。

良寛さんは自らを「大愚良寛」と呼びました。つまり「大馬鹿者の良寛」という意味です。私より大馬鹿はいないのだから安心していいよとみんなを励ましました。子供とかくれんぼをすると、子供たちは夕方になって黙って帰ってしまいました。鬼であった良寛さんはすでに帰った子供たちをいつまでも捜していたそうです。後になって子供たちが良寛さんに謝るとまったく気にせず、また同じように遊んでくれたということです。

良寛さんは山奥の小さな小屋に住んでいました。家の中には何もありません。薄っぺらい布団があるだけです。ある寒い日、良寛さんが寝ていると泥棒が忍び込みました。泥棒は何も取るものがないので仕方なく良寛さんのかけている布団をはいで持っていってしまいました。良寛さんは泥棒が来たことを当然知っていましたが、せっかく来たのに取るものが汚い布団しかなくて悪いことをしたと思ったそうです。しばらくしてそれを聞いた村の人は慌てて布団をあげましたが、そんなエピソードからも分るように、誰も真似することができないほどに、あるがままに生きる純朴な人だったようです。たしかに大馬鹿かもしれません。しかし、村人は何か困ったことがあれば良寛さんに相談に行き、いつの間にか良寛さんの存在は広まっていきました。良寛さんは自分が有名になるのを望んでいなかったのですが、子供たちの凧に書いた良寛さんの書があまりにも素晴らしかったので、良寛さんの書はたちまち高値で取引されるようになります。そのうちに良寛さんにうまいことを言って書を書かせ、それを高く売る人が現れました。良寛さんがそのことに心を痛め書を書かなくなると、偽物がたくさん出るようになりました。しかし、良寛さんの囚われのない自由な書は誰もまねすることなどできません。今でも偽物が多数売られていますので用心してください。

さて話を戻しますが、いい人に思われたいという思いも完璧主義から出てきているのではないでしょうか。完璧主義でなければ、人の評価など気にすることはありません。気にしてばかりいると大変なストレスになってしまいます。また、自分がいい人に思われたいと思う「善良主義」に陥っていると気づいた人はすぐにでもその鎧を脱ぎ捨てましょう。とはいえ自分で自分の性格を変えようとするのは難しいというかできません。無理に変えようと思うとさらに深みに入ってしまいます。そうではなく、自分が完璧主義であったこと、善良主義であったこと、それが自分を苦しめていたことに気づくだけでいいのです。これが実は本当に大事なのです。治そうとするから治らないし、苦しくなるのです。

自分の心を苦しめていた原因にたどり着けば、癒しは自然に始まります。何度でも繰り返し失敗するでしょうが、あきらめずに自分の思いのクセに気づくことで自然に治っていきます。本来の自分の姿ではないのですから、正面から相手にするのは間違っているのです。それはエゴであり、自分であって自分ではない。本当の自分ではないのです。言い方を変えれば化け物です。いくらでも巨大化します。トリックをしかけてきます。相手にすればするだけ大きくなり、自分がコントロールできたと勘違いしたときには、すっかり同化して強固な鎧と化しています。ですから相手にするのではなく気づくことで自然に小さくしていくのです。簡単ではありません。人間は人類全体で大きなエゴを抱えているようです。ですから一人で立ち向かっても無駄ですし、逆に一人が気づけば複数の人に変化が訪れます。

いい人と思われたいが出たら捨てていきましょう。何度でも行いましょう。捨てると言うことは相手にしないということに気づくことです。性格は治そうとすれば治りません。エゴを振り落としていく作業をしていくしかないのです。

私もそうしていくうちに自分を許すという大きなテーマにぶち当たる自分がいたのです。

«「病院に行けば治してくれる」は大間違い
紫外線は健康に絶対必要»
一覧へ戻る