自律神経失調症と思われる患者さんと向き合って約20年経験を積んできました。
自律神経失調症と言いましても症状に差があり、十分に仕事や家事、通学ができる方もいれば、職場や学校に行こうと家を出ても電車の中で体調がおかしくなってしまう人、どうにか出社できても夕方までもたない方、家を出ることも難しい方など様々な状態の方がいると思います。
胃腸の過敏症、膀胱の過敏症、めまい、耳鳴り、うつ、パニック障害、不安症などつらい症状も人によって違いがあります。
このような症状の方すべてが自律神経の問題とは言いませんが、私の20年の経験上、自律神経の崩れが改善されることで症状もよくなる方が多くいます。
自律神経の不調を改善する整体施術とはどういうものなのでしょうか。私が自律神経失調症の患者さんに向けて整体院を開いたころ、自律神経の不調を得意とする院はほとんどなく、多くの同業者の先生が自律神経の改善は難しいと言っていました。
私は自分自身が重度の自律神経失調症、うつ病、パニック障害などを体験して、どこに行っても治らない状況に陥ったことがあります。私は病気をする前から健康の仕事に携わっていたため、たくさん治療院を紹介してもらえたのですが、どこに行っても前に進むことはありませんでした。うつ病、過敏症、不安神経症などを併発し慢性痛も深刻だったため、どこに行っても深入りしないというスタイルをとられました。
最後は強い精神薬しかないということになってしまいました。詳しくは私のプロフィールの体験談をよろしければお読みいただきたいのですが、私は薬が合わずに苦しみました。本当に骨と皮だけになるほど苦しい日々を過ごしました。
あきらめる前に自分で病気になったのだから自分で治すしかない、自分しか治せないと覚悟を決め、治療院に頼らないと決めて自分の生活において苦しみの元になっていたものを正直に見つめ、やめなくてはならないこと、コツコツと毎日やり続けなくてはならないことを少しずつ理解して実践していくことを決めました。
覚悟を決めました。死ぬよりはましだと必死にやりました。私は元々精神的に弱く、逃げる癖がありましたが、心の底から気力を絞り出し、誰にも理解してもらえなくても、たった一人の戦いであっても、逃げずに病気と健康と向き合おうと一歩一歩歩きました。
例えば、食事で言えば甘いものやお菓子類をやめて、同じ時間に栄養をしっかり管理して手作りのものを徹底しました。化学物質、添加物を避け、自然のものを摂るようにしました。水をしっかり飲むこと、カフェインやお酒も飲みません。ほとんど寝たきりでしたが5分でも歩こう、10回でもスクワットをしようと積み重ねました。呼吸法を毎日やり続け、太陽の光をしっかり浴びて、何より「つらい、苦しい、痛い、死にたい」などのマイナスの言葉は決して口に出さないと決め、「必ずよくなる、健康になる」などの言葉や感謝の言葉を意識的に出しました。目をつむればいろんな人の顔が出てきます。いい思い出はほとんど出ません。後悔の思いばかり、人にやられたこと、してしまったこと、失敗してしまったことなど、いつまでも止まることなく出てきます。脳は疲れていました。私はそのすべての人に感謝していました。どんな思いも相手にせず、ただ感謝に変えました。
過去を憂いて後悔ばかり、未来を憂いて心配ばかり、このような弱い心ではだめだと知った時に、今しか現実は存在していないというシンプルな事実を深く理解し、今をしっかり生きると不安も痛みも軽くなっていくことを体験しました。過去ばかり思いだして自分を責めていることに気づき、自分を責めないと決めました。誰も悪くない、誰も責めないと決めました。
私は合気道を習っていましたので、気は心であり、身体はそれにすべて従うという言葉を思い出しました。
私は自分の過去ばかり気にして今を生きていない、今ここにしか生命は流れていないし、気は存在していない、過去を責めて、未来を心配する、このような心では気が枯れて当たり前だ、と気づいたのです。
ではどうすればよいか、過去はない、私の愚行はすべてゆるされたと言い聞かしました。未来は心配しない、今生きている生命こそが気であり、それと共にあれば心は健康になり、身体はそれに従うと深く理解したのです。健康になればまた仕事もできる、何より今までは「こうならなきゃいやだ」と贅沢ばかり言っていたことに気づきました。生きているだけで幸せだ、生きていればどうにかなる、誰かに認められよう、優秀だと思われようなどが消え、生きることの喜びがダイレクトに感じられるようになるにつれ、自然に感謝の心が出るようになり、不安や痛みも小さくなっていくのを感じました。
そこから呼吸法が変わりました。吐く息はすべてを惜しみなく捨てる、吸う息は新しい生命をいただく、その気を自分のためだけに使わずに、今できることに使っていけば、また気が入ってくる、
私はすぐには社会復帰できる状態ではありませんでしたので、自分を心配する気を家族のために使おうとしました。少しでも家族のためにできることはないか、洗濯や家事、そうじ、妻や子供に声をかけ、何かいいことあったか、楽しいことあったか、と自分から心を離し、気を外に意識的に向けようとしていったのです。
家族も今まで病気で何もできない、しようとしない私が健康そうではなくても話しかけてくる、気にかけてくることにポジティブな反応をしてくれて、家の中の暗い空気が変わっていきました。
人間は自分の力だけで生きているのではなく、生かそうとしてくれる生命によって生きています。
その力は無限で、無尽蔵で自分がそれを信じることができればどんどん生命の力が蘇ってきます。
そのためには全体の気に帰っていく、その気をいただくためには自分の心配や、ましては批判や不満などに使えば気は体内で腐敗し病気や不安の元になるということに気づきました。心配しない、悔やまない、責めない、不満を捨てる、明るい言葉を言う、他のために働く、このようなことから外れてしまうから病気になるのです。自律神経というのは大きな気に生かされている道理であり、原理なのだと思います。そう考えると、自分のために人をだましているような人はやがて気が枯れて内部で腐ってきます。
全体のために命を輝かしていれば病むことはない、心が元気であれば身体はすべてそれに従うのです。
このようにして私は完全に復活していく道を歩き始めました。
治癒が始まると健康は驚くほど早く戻ってきます。このような力が人間誰にでもあるのです。
気が大切なのです。
私が自律神経失調症の患者さんがご来院されて、どんなに重症の方でも大丈夫だと自然に思えるのは、この治癒力を心の底から信じているからであり、生命の力に対する信頼が揺らがないからです。
先生と話しているだけでも楽になってきました。よくなる気がしてきました。とおっしゃってくれる方が多くいます。きっかけさえ掴めばどんどんよくなっていきます。人間の本来の生命の力、気に病気は勝てません。病気など恐れるものではありません。恐れる心が病気になるのです。自律神経は必ず整うのです。どんなに病んでいたとしても復活するのです。
私は自分自身がまったく病気を怖がらずに心配せずにおだやかな気持ちで患者さんの体を触ります。すると緊張していた胃はゆるみ、頭蓋骨も緊張をほどきます。
力は必要ありません。優しく触っていると患者さんの体は反応してきます。人間どうしの生命は繋がっています。気は本来ひとつなのです。ですから私の健康の気が伝わるのです。
これが自律神経整体の根本の秘密です。テクニックではありません。どこの部位をこのように触るとかではありません。もちろんそれもある程度は必要ですが、何よりも大切にしているのは気なのです。
そのために呼吸法の訓練を毎日(できる限り・・・)やっています。
私の体験がどなたかのお役に立てればいいなと今日も思います。
お読みいただきありがとうございました。