7月18日から9月6日まで世田谷美術館で金山康喜展がやっているということで行ってきました。実はすでに二回も。
世田谷美術館は砧公園内にあって、家からも近いのでたまに行くのですが、今回の金山展は期待以上のものでした。
金山さん以外の日本人洋画家も展示されていて、佐野繁次郎、岡本半三、野見山暁治、猪熊弦一郎などの作品が観られます。
中でも荻須高徳の作品はとても印象深く、とても感動しました。荻須氏の作品は今までも興味があり、写真では何度も見ていましたが、本物を近くで見るのは初めてでした。構図もそうですが、ここまで汚い色を使うのか、と驚きです。ここまで思い切りのいい色の構成は写真ではわからない迫力を感じました。空に使う光の色はイエローが使われていますが、それが暗い建物や道路の色との対比が素晴らしく、しばらく立ち止まってしまいました。
そして金山康喜の作品ですが、私は金山さんという方を実は知りませんでした。絵画に関しては一般的な日本人より詳しい方なので、恐らく世間的にはほとんど知られていないのではないでしょうか?
それもそのはずで、彼は33歳でこの世を去っており、残された作品は50点程度、油彩画の完成品は20にも満たないようです。パリに行ったのも絵を描きたいと思って行ったのかわからず、経済学を学ぶためだったとも言われています。しかし、1952年にサロン・ドートンヌ展に入選し、パリでも日本でも一躍有名になったようです。
作品は色彩がとにかく特徴的で作風が確立されていて、すべての作品に金山さんが描いたという統一性を感じます。遠近法や細かい描写は無視され、大胆な構図に独特な色彩が使われています。
特に青や緑、小豆色などが印象的で幻想的な作風で詩情を感じます。
テーブルの上に置かれたコーヒーミルや瓶はほとんど想像で描かれたようで、リアリティを無視し、色によって出来上がる構図を見ているかのようです。使われる色はとにかくセンスがよく、当時の日本人には発想できないパリの当時の空気を感じさせます。
今でもレトロであり、斬新であり、色のセンスはとにかく素晴らしいと思います。油絵で黒を使うのはとても勇気がいりますが、黒が意味のあるアクセントとして、名脇役として使われていてとても勉強になりました。
なぜ、若くして死んでしまったのか、原因ははっきりわからないようですが、50年を経て、こうして作品がいきいきと私たちに何かを語りだしてくるのを観ると、例え短い人生であっても素晴らしい人生だったんだなと感じてしまいました。50年代に日本にこんな画家がいたなんて、素晴らしい発見でした。
砧公園には美術館専用の駐車場もあり、バスも近くまで来てますのでとても行きやすいと思います。なによりすいているのがいいです。ゆっくり作品を観ることができます。そして鑑賞後は公園でのんびり過ごせますので、休日の過ごし方としては超おすすめです。
金山康喜展、とてもいい時間を過ごすことができました。