トラウマを抱えた人がよくうちにいらっしゃいます。
過去に生じた大きな出来事を体験して以来、家から出られなくなってしまった人、対人関係がうまく築けなくなってしまった人、
自信を失ってしまった人、健康を損ねてしまった人、多くの方がいます。
とてもつらい体験をすれば体も心もショックを受けて、気が抜けたような状態になってしまったり、緊張状態が続いてしまってもおかしくありません。
普段は普通に暮らすことができても、ふとした時に過去の体験が頭をよぎり、とたんに不安が忍び寄って来て、生気を奪っていくことを感じている人もいます。
過去の体験はいつまでも自分を苦しめ、ここから完全に自由になることはない、過去は変えられないのだから。
あれほどの体験をしたのだから立ち直れなくて当たり前だ、影響を受けて当たり前だ、誰でもそうなる。私はずっとこのままだろうが、この自分を受け入れていくしかない。
このように思われている方もいるかと思います。
しかし私は自信を持って言います。
「過去に力はありません」
このことこそが真実です。そして自分を救えるのは自分しかいないという深い意味に繋がっていきます。
私自身、トラウマに苦しみました。私が寝たきり状態にまで病んでしまい、精神的も閉鎖病棟への入院を検討されるほど病んでしまったのは、過去に力があると思い込んでいたからです。
自分を責め、他人を責め、過去の出来事を責め、これらをいくら手放そうとしてもできない自分がいました。
たくさんの方にアドバイスをもらいましたが、過去を乗り越えることの大切さ、今の自分がポジティブ思考になることなどは却って苦しみを強くしてしまいました。
私が復活できたのは過去にはなんの力も無い、過去に影響を受ける受けないかは自分が決められる、という真理に気づいたからでした。
それまでの自分は過去を認めていました。もちろん過去は存在していたのですが、過去よりも大切なのは今の自分が何を決めるか、何を選択するかです。
過去の影響を受けない、と決めれば過去は何もできません。過去に今の自分が影響を受けることはなくなっていくのです。
それだけ今の自分の意識が大切なのです。過去に影響を受けている生き方も、今の自分がそれを選択しているということに気づかなくてはならないのです。
あの出来事がつらかった、あれをゆるすことができない、自分のしたことをゆるすことができない、私が人間嫌いなのも、仕方がないことなのだ、
これらはすべて今の自分がその都度、選択していることに過ぎません。言い方を変えれば決めつけているのです。
とてもつらい過去がある方でも明るく生きている方、人のために生きている方、そのような方を知って、私は気づきました。
いつまでもゆるせない、立ち直れないと決めつけているのは自分だった。
今、この場所で、自分が過去ではなく新しい未来をつくるために、しっかりと足を下ろすことが大切なのだということを学ぶことができました。
今すぐ、人は変われます。過去に自分を常にコントロールされ、同じ恐怖心、同じトラウマに縛られ、動けなくなる自分は、今日からいなくなるのです。
もちろんすべてをきっぱり、さっぱりと切り替えられる人は少ないと思います。
すぐにできなくても、必ずできるようになります。今日、すべての流れを断ち切り、まったく新しい自分で生きようと決めれば、今日がその一歩に変わるのです。
例えば、人を傷つけ、刑務所に入るほどの罪を犯した人であっても、いつまでも過去に引きずられ、自分は幸せになってはいけないんだと自分自身で決めつけてしまえば、その通り苦痛だけの人生になってしまいます。
本当にそれが正しい選択でしょうか。
過去を無かったことにする代わりに、新しい価値観を手に入れる必用があるのだと思います。
例えば、残りの人生を人助けのために精一杯使おうとすることは、くよくよ悩み、自暴自棄の果てに病気になることを望むことより、ずっと命を大切にしていると思います。
そしてこのような負の連鎖を断ち切ることが人類全体として必用とされているのだと思います。
実はこれは仏教の話からの例えで、実の母親さえ殺してしまった人が心から悔いて釈尊の弟子になり、多くの人を救ったという話を参考にしているのですが、興味のある方はぜひ読んでみてください。
過去があったからこそ、大きな菩薩心を手に入れることができたという仏教の教えで、選択することの大切さを説いています。
自分をゆるすということは他人をゆるすことよりも、ずっと難しいと言われています。
ですからどんなにゆるせないと思う出来事や人も、自分さえその気になればいつでもゆるせるのです。
ゆるすことを選択するという意志があればできます。
あの人をゆるしてはいけない、ゆるさないという気持ちこそ大切なのだ、と思う気持ちはよくわかりますが、
ゆるすのは自分のためにです。自分がつらい感情から解放され、安らぎを手に入れるために、
「私はゆるすことを選択します」
と毎日宣言することをお勧めします。
これらのことを私は自らの闘病の中で学んだのですが、心理学者のアルフレッド・アドラーや精神医学者のジェラルド・G・ジャンボルスキー、
精神科医のフランクルなどの著書から多くを学びました。「それでも人生にイエスという」という著書はとてもおすすめです。
トラウマはすぐに癒やされないかもしれません。しかし時間の問題です。
必ず立ち直れます。そして自分の人生を生きていきましょう。