筋膜というのは筋肉を覆っている膜ですべての筋肉の表面にくっついているとイメージして下さい。この筋膜は筋肉ごとに分かれているのではなく筋肉同士をくっつける働きもあり、筋肉が連動して動けるのも筋膜の働きがあるからです。
筋膜はすべての筋肉が一繋がりにくっついている訳ではなく、それぞれグループが分かれています。大きく見ればすべて繋がっていると言うこともできるかもしれませんが、施術をする場合はグループごとに分けて考える必要があります。
例えば体を曲げる(屈折)させる動き、伸ばす(伸展)動き、ひねる動き、蹴り上げる動き、投げる動きなど、それぞれの筋膜のグループが連動して動きを安定させています。
例えば足の裏の筋膜はふくらはぎの筋膜と繋がり、太ももの裏のハムストリングスの筋膜と繋がり、仙結節靱帯を通って臀筋、脊柱起立筋、そして首の後ろ側の筋肉から頭部(おでこ)までつながっており、すべての筋膜が連動して動きを作ります。ここでは主に屈曲する動きが関係します。(腰を曲げる、首を前に倒す)
このうち一つでも筋膜が緊張し固まってしまうと、このラインすべてに影響が出ます。例えばふくらはぎの筋膜の硬直が腰痛や首痛に繋がっていることがあります。
首痛や腰痛で来院された方に対して患部の首や腰を時間を掛けてもんだり押したりしてしまいがちですが、実はそれでは症状は解決しません。強く刺激をされて、その時は気持ちが良く、楽になったと感じるかもしれませんが、翌日には症状が戻って来てしまいます。また患部をやり過ぎたことで、筋膜全体のバランスが崩れ、さらに違うところに痛みが出ることも考えられます。
私はできるだけ遠くの筋膜から緩めていくようにしています。この場合ですと足の裏の筋膜です。そこからくるぶし、アキレス腱、ふくらはぎと緩めていきます。そこからハムストリングス、臀筋と緩めていきますが、体の状態は個人差がありマニュアル通りには行きません。筋膜もただマッサージすればよいと言う訳ではなく、浅い層の筋膜からゆるめて、深い層の筋膜を緩めていく必要があります。多くの場合、浅い層の筋膜のラインをすべて緩めてから、深い層を緩めていきます。
例えば股関節に問題が見えてきたり、骨盤のゆがみが見えてきたり、仙腸関節の動きが悪かったり、腰椎に問題が見えてきたりします。この場合、どのタイミングでどのように踏み込むかはとても難しい判断になります。
突出した問題に対しても全体的な視野を持ち、全体のバランスを重視します。例えば腰椎に問題があって、近辺の筋肉が硬くなっていたとしても、全体を緩めていくと腰を触る度に自然に緩んでいることが確認できます。これは無理にほぐすのとは違い、全体の機能が改善したことで患部の問題が解決しているので、根本的な改善にも繋がります。
結果的に腰痛や首痛が楽になるので、このやり方をしていますが、私が意識しているのは体を0地点に戻すことだけです。症状を改善しようとすると本質が見えなくなってしまうことがあり、症状にとらわれずに、全体のバランスを見ます。
何かバランスがおかしいところ、崩れているところ、そのようなところを一気に動かそうとせず、ゆっくりと緩めていくとすべてによい結果が出ます。